町田 実は、私たち研究者の間では、そうした現象を「マッスルメモリー」と呼んで注目しています。子どもの頃、特に小学校高学年から中学生頃までの成長期にしっかり運動をしていると、筋肉や骨が丈夫になるだけでなく、筋力が落ちても、再び鍛え始めた時に筋肉がつきやすいことがわかってきたのです。
原 わあ、それはすごい!
町田 運動をしてこなかったという方も、がっかりする必要はありません。昔は和式トイレを使ったり、学校で長い廊下を雑巾がけしたりする機会が多かったですよね。私たちはこれらの日常動作で、股関節や足首の柔軟性を高め、足や背中、体幹の筋肉も自然に鍛えていました。ですから、昭和世代の方は《眠っている筋肉》のポテンシャルが高い可能性があります。
原 朗報ですね。では、歩く力を維持するには何から始めればいいですか?
町田 先ほどもお話ししたように、歩く力は筋肉だけで決まるものではありません。それでも、筋肉を積極的に動かす「筋活」はとても大切。というのも、ロコモの予防・改善には筋肉の維持・強化が欠かせないからです。また、心臓や自律神経を自分の意思でコントロールすることはできませんが、筋肉は自分で動かすことができます。努力した分だけ変化を実感しやすいので、取り組みやすいのも魅力です。
原 そのほうが嬉しいし、頑張ろうと思えます。モチベーションは大事ですよね。
町田 もう一つ大切なのは、筋肉は何歳になっても応えてくれるということ。90歳を超えてから筋力トレーニングを始めても、筋力や身体機能が向上することは、多くの研究で示されています。実際に、ロコモ予防に取り組む高齢の方々が、そのことを自ら証明しているのです。

