野茂英雄さんの先進的なトレーニング

野茂さんのトレーニングは、まさに先進的でした。

当時ライオンズで取り組んでいたのは、いわゆるフリーウエイトのトレーニング。

大きなダンベルを、ベンチプレスやスクワット、デッドリフトなどで持ち上げることで筋肉に負荷をかける手法です。

プロでもそういうやり方が主流でしたが、野茂さんは違った。

ダンベルではなく、大型のマシンを使う。安全に、効率的にトレーニングをしていました。多くのメニューをこなすことで、全身の筋肉をまんべんなく鍛えていく。今日は上半身、今日は下半身と、ひとつの部位に集中的に負荷をかけることもしません。

「これを私たちは『スロートレーニング』と呼んでいる」

大川さんはそう説明してくれました。

実際にやってみると、スローという言葉が持つイメージとはまったく違いました。

確かに激しく身体を動かしたりはしないのですが、効率的に身体に負荷をかけるので、結果としてとてもしんどい。ついていけず、ショックでした。トレーニングなら、人並み以上にやってきたつもりでした。でも、まったく足りていなかった。石井さんはそれを見抜いて、僕を野茂さんのところに行かせたのだと思います。

フィジカルトレーニングを続けていく中で、少しずつ打撃にも変化が生まれました。

6月くらいから、打球の質が変わった。スイングが強くなっているのを実感できました。そのことで、多少詰まってもヒットゾーンにボールを運べる自信が芽生えてきたのです。

二軍の打撃コーチだった田邊徳雄さんによる「逆方向縛り」はもう解除されていました。でもこうして肉体改造が進んだことで「長くボールを見て打つ形」が自分のものになった。

二軍で打率3割3分の成績を挙げられたのも、一軍で初安打を打てたのも、こうした積み重ねがあったからこそ。僕はそう感じていました。

※本稿は、『獅子貫徹 ライオンズ一筋25年、理想の打撃を追い求めて』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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『獅子貫徹 ライオンズ一筋25年、理想の打撃を追い求めて』(著:栗山巧/KADOKAWA)

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