90歳で歩く楽しみを再発見された方も

運動を教えるなかで、「何歳からでも筋肉は鍛えられる」ということを目のあたりにしてきました。

特に印象深かったのが、登山仲間でもある医師の橋本しをり先生が開催する「しをり体操教室」の生徒さんです。この教室はひざや腰に不安を抱え、橋本先生の病院に通院する患者さんが中心。「買い物がつらい」「散歩なんて無理」という方も少なくありません。

そこで出会った90歳の女性は、太ももを触ると皮膚のすぐ下に骨を感じるほど筋肉が減少していました。「歩きたくない。転ぶのが怖い」と話し、外出はいつも車。ですが筋力をつけたいと自宅でも太ももの前側のトレーニングを続けられました。

その内容は、(1) 背もたれに背中をつけないようイスに座り、背筋を伸ばして腕は胸の前で軽く組む。(2) 片足を、真っ直ぐひざを伸ばし床と平行になるように上げて、つま先は天井に向ける。(3) 上げた足をさらにできるところまで上げ、上げきったら床と平行の高さまで戻す。これを片足ずつ10回程度繰り返す、というもの。

すると少しずつ足の筋肉がついてきて、「歩くのが楽しい」とおっしゃるまでになったのです。歩いて外に出る機会が増えると人の目を意識するようになり、明るく若々しい服を着るようになりました。

歩くことをきっかけに、見た目も気持ちも前向きになったのです。このトレーニングはテレビを見ながらでもできますので、思いついたらぜひ取り入れてみてください。

歩くという行為は何も考えず、無意識にできてしまいます。だからこそ、まずは「地面をしっかり蹴る」。それだけを意識してみましょう。常に意識しなくても、思い出したときだけで十分。それを繰り返すうちに自然と体が正しい歩き方を覚えてくれます。

はじめは5分でも、家のまわりを一周するだけでもかまいません。「外は気持ちいいな」「明日も歩こうかな」。そう思えたら、自然と歩くことが日課になるはず。

散歩は運動のなかでも一番お金がかからず、もっとも効率的でハードルの低い運動です。疲れない、転ばない散歩で、健康寿命を延ばしていきましょう。

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