「会話に支障があっただけの不調が、歌声にまで及んでしまった。これ以上、病状を隠し続けることはできませんでした。」

歌手としてマイナスな情報になるのでは、とスタッフは心配してくれましたが、いまとなっては公にしてよかったと思っています。私自身どこかホッとできたし、同じ病気で苦しんでいる人から「公表してくれてありがとう」といった言葉もたくさんいただきました。「歌わなくていいから司会をして」と言ってもらったときは、それでもいいんだ、と嬉しかったです。

いまの対処法としては、定期的な注射を続けていくのと、音声外来でボイストレーニングを受けること。あとは手探りで病気とつきあっていくしかなさそうです。

私の場合、ファルセット(裏声)はきれいに発声できるので、ボイトレの先生から「裏声でしゃべるトレーニングをしたら?」と勧められたことがありました。

でも、そんなの絶対イヤですよね。病気になる前の声を取り戻したくて頑張っているのに、裏声でしゃべり続ければいい、なんて。声は、誰よりも本人が一番敏感なものです。そこに歌手だとか、一般の人だとかは関係ないような気がします。

 

「せっかくゆっくりできるんだから」と夫

こういう、同じ病気になった人にしかわからない気持ちに、今後は寄り添っていきたいですね。「神様が休めと言っているのよ」と声をかけてくださる人もいますが、私は仕事を「休む」のではなく、この時間も誰かのために役立てられたら、という思いでいっぱいなんです。

夫はいまの私の状況を理解して、「せっかくゆっくりできるんだから、どこへ行きたい?」と聞いてくれます。ずっと思いつかなかったのですが、ちょうど昨夜、『ダーウィンが来た!』の録画を観ていて、カメラ好きの血が騒いだのか、「アフリカに行きたい」と思いました(笑)。

シマウマを狙うチーターの映像が流れたとき、「カメラをどこに置いて撮ってるんだろう」という話になって。ベージュ色に広がるサバンナのなかの緑をみて、「あ、私だったらあの緑に隠れて撮る!」と思ったんです。

本当に久々に、むくむくと、やってみたいことが湧いてきました。こんな気持ちで、病気とうまくつきあい、ときに忘れながら、毎日を過ごしていけたら、と思います。