「あの呼吸を自分の体が覚えているから、もう一度思い出すためにずっと必死に芝居をしている、とも言えます。」

桃李さんが結婚した時は、感慨深かった

俳優の仕事は、台詞を覚えるのは大変ですし、自分の不甲斐なさに心が折れることもしばしばですが、共演者や見てくださる方に「届いた」と感じられる瞬間に喜びがあります。そんな時には、物語の一部になれたと感じることができるんです。

舞台ならではの魅力、醍醐味といえば、映像ではなかなかできないような役柄にも果敢にチャレンジできるところ、言葉で遊べるところではないでしょうか。また、ある日は、稽古の成果がまるで出せなくて落ち込んだかと思うと、別の日には最大限のパフォーマンスができる、ということも。おのずと自分自身を見つめることが増えます。そんな時間も僕は好きです。

転換期となった作品をひとつ挙げるとしたら、16年のドラマ『ゆとりですがなにか』です。松坂桃李さん、柳楽優弥くんをはじめ、共演者の皆さんと自然に呼吸するように芝居をしていた空間が、今も忘れられなくて……。あの呼吸を自分の体が覚えているから、もう一度思い出すためにずっと必死に芝居をしている、とも言えます。あの時の空気感に出合いたくて、役者を続けているのかもしれません。

昨年、プライベートでも一番仲良くさせていただいている桃李さんが結婚した時は、感慨深かったですし、本当に嬉しかった─って、僕ももう30歳を過ぎたし、のんきに構えている場合じゃないですね。(笑)

年齢とともに責任を負うことも増えてきていますが、だからこそ《あの呼吸》を思い出して、力を抜いて芝居を楽しみたいです。ドラマや映画での僕に興味を持ってくださった方は、ぜひ劇場に足を運んで生のエネルギーを感じてください!