いつもにぎやかな「谷川サロン」

何十年も研いでいるうちに擦り減って短くなった鋏

近所の常連の方も、定期的に来てくださいます。そういう方たちとあれこれお話しするのも、この仕事ならではの楽しみですね。私とだけでなく、お客さん同士もカットを待つ間に仲良くおしゃべりして。お店と自宅の居間が隣り合っているので、そこにポットを用意して「あなたはお茶にする? コーヒー?」なんていつもにぎやか。

町の人から「谷川サロン」なんて呼ばれていたんですよ。近所のお友だちとも、きょうだいのような、親戚のような親しい関係。「ちょっと遊びに来ない?」と声をかけると、「すぐ行きます!」と来てくださる方が多くて、それも幸せなことだと思っています。

ですから宇都宮に住んでいた息子から何度か「いっしょに住もう」と誘われても、「私は大丈夫」と断っていました。孫やひ孫の顔をいつも見られるのは嬉しいけれど、勝手知ったる暮らしや仕事、お友だちと離れたくなかったのです。それでとうとう息子夫婦が折れて(笑)、私が102歳のときに、那珂川町でいっしょに住んでくれることになりました。

同居するなら家の中を片付けなければと思って、物置の中からいろいろ出して居間へ積んでいたんです。そこへいつものように、店で使って洗濯したタオルを取り込んで床へ放り出して。次に自分の衣類を抱えて戻ってきて、タオルの山に足を掛けたとたん、足を取られてすとーんと転び、家具にわき腹をぶつけてしまったのです。救急車で運ばれた宇都宮市内の病院で、肋骨が2本、折れているとわかりました。

でもね、お医者さんも驚くくらい治りが早かったんです(笑)。レントゲンを見ながら先生が、「おお箱石さん、もう骨がくっついてる。明日退院してもいいですよ」って。毎日の運動と食事、立ち仕事で骨が鍛えられたおかげでしょうか。