「北の国から」を地でいくような試練

敬子さんは言う。

 

「自然のなかで生きていくということは、何度も何度も大地からの洗礼を受けて、あっちへこっちへと跳ね飛ばされながら、1歩進んで2歩下がるような毎日だということなんでしょう。すぐにでも富良野へ戻りたい。でも、いまは東京のお店に大切なお客さまを迎える準備に集中します。ふさぎ込まず、歩き出します」

あくまで前向きだ。東京の店を完全に明け渡し、富良野での生活が始まる直前の試練だった。

森に抱かれたときの安心感はなんだったのだろう。「ここでの生活は甘くないぞ」という自然からの挨拶が、あの台風だったのか。ドラマ「北の国から」を地でいくような試練を、いきなりリアルになぞるようだ。

※本稿は、『レストラン「ル ゴロワ」のレシピから-季節のごはんと暮らし方』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。


『レストラン「ル ゴロワ」のレシピから-季節のごはんと暮らし方』(著:大塚健一、大塚敬子、北村美香/朝日新聞出版)

東京・表参道で人気を博していたフレンチレストラン、「ル ゴロワ」。人気店を閉め、倉本聰の計らいで富良野塾に住み始めた夫婦が、新たにお店を始めるまでのストーリーとシェフの季節のレシピ、北の国の暮らしを美しい写真と文章で紹介。