そんなとき、たまたま地元の知人から事務所の人を紹介されて、「東京に来て、オーディションを受けてみないか」と声をかけていただいたんです。これはもう行くしかない!と。

芸能界のことなんて何一つ知らなかったし、自分に何ができるのかもさっぱりわからなかったけど、ここで何かをやらないと、このまま何者でもない自分のままの人生になってしまう。

そんな空っぽな自分を埋めるために、住む場所も決めずに地元を飛び出してきたんです。上京する3日前に、「東京に行くから」って母親に言ったら、「なんやと?」ってビックリしてましたけどね(笑)。

振り返ってみれば、当時は、本当に怖いもの知らずだったんですよ。『ロミオ&ジュリエット』のオーディションを受けてみないかと事務所から言われたときも、ことの重大さがまったくわかっていなかったです。オーディションのときに「譜面を持って歌ってもいいよ」と言われても、譜面の読み方さえわからない僕を見て、演出家の小池修一郎先生が苦笑いしていたくらいです。(笑)

そんな状態だったのでジュリエットの従兄弟でキャピュレットの跡取り、ティボルト役に決まったときは「ヤバイ! どうしよう!?」って、真っ青になりました。