母親の死と父親の関係
末井 母親の描き方に対して父親に冷たいのでは? 母親の死は父親のせいだと思う部分もあるのか、と聞かれたことがあるんですけど、父親に冷たい感じがするのは仕方ないんですよね。ぼくは親父が大っ嫌いなんで。
春日 (笑)
末井 本にも書いていますが、父親はもう最低なんですよ、人間として。そういう親を持ったってことが恥かしいっていうのがずっとあって。70少しで死にましたけど、鉱山で働いた父親は石の粉を吸っていたんで珪肺だったんです。補助金ももらっていて。実際、それで早死にだったんだと思います。
でも、父親がしっかりしていたら母親は死なかったのでは、と考えたことはないですね。母親が愛人とつき合うようになったのは、親父がインポテンツ(ED)だったことが一因かな、とは思いますけど。
春日 どうしてわかるんですか。
末井 働いていた鉱山でトロッコが腰に直撃したことが原因で、父親がそのころ一時期インポテンツになっていたのは知っているんです。いっぽうの母親は肺結核で、これは想像ですけど、ちょっと微熱があったんじゃないかと思うんです。で、微熱っていうのは、性欲を高めたりするようなんですね。
春日 ええ、そうかもしれませんね。
末井 微熱で性欲の増した母親に、応えられない親父。そうした状況で隣家の若い青年が遊びにきて母親と関係を深めていったのではないかと。だから、そのことについては、親父に何か恨みといったものはないです。