やっぱり歌いたい!
アメリカにいたのは足かけ4年ほどです。その間に音楽関係の方を紹介していただいて会社訪問をし、ラジオ局を見学して日本とは違うシステムを知ることができました。そうしているうちに制作する側の仕事に興味が湧いてきたのです。そこで日本に帰ってきてから音楽関係の知人に持ち掛けたりしていたのですが、ほどなくして結婚相手と巡り会い、子どもが生まれて、そこからは子どもオンリーの数年間を過ごしました。音楽の「お」の字もない生活を送るのは初めてでした。
子どもを乗せて運転している時に「アンパンマン」のCDを流したり、家でテレビ番組『おかあさんといっしょ』を観たりはしていましたが、すべては子どものため。その為か音楽が耳に入ってこないのです。といって不満があったわけでもなく、それが日常になっていました。
ところがある日、子どもが寝静まったあとに洗濯物を畳んでいたら、テレビから辻井伸行さんのピアノ演奏が流れはじめて。聴いているうちに、それまで蓋をしていたタンクの蓋がパンっと空いて、溜まっていた炭酸が弾けるようにわーっと涙が零れてきました。その時に「このあふれる想いは何なのだろう?」と自問自答したところ、「私は音楽に携わる仕事がしたい」「やっぱり自分で歌いたい!」という声がはっきりと聞こえてきたのです。私が40代半ばの頃のことでした。