ニューアルバムのテーマは「私自身」
今回のアルバムを制作することが決まった時は、お菓子を与えられた子どものようにはしゃいでいたのですが、いざスタジオに入るとドキドキしてきて、少し戸惑ってしまいました。なにしろ27年ぶりの収録でしたので。それにしても松本隆さんと林哲司さんというゴールデンコンビにデビュー曲を手がけていただいたなんて、児島はなんて恵まれていたのだろうと今更ながらに思います。「コーラの瓶に指輪を入れて」とか「レンガ色のキャンパスへ」といった歌詞は、私達世代の青春時代ならではという感じがしますが、今回、セルフカバーをして、恋する気持ちは普遍的なのだな、歌は時空を超えて輝くのだなという発見がありました。「ジプシー」という歌にしても、たくさんの方が歌う「ジプシー」を聴くたびに嬉しいと思っていました。ライブで歌うと「懐かしい!」と言ってくださる方もいて、それも嬉しいのです。同じ時代を生きた人と共に青春時代にタイムスリップしたり、さまざまな経験を重ねながら今という時を生きていることに感謝したりと感慨深くて……。
レコーディングで、私が一つだけリクエストしたことがあります。それはセルフカバー曲の収録を後に残したいというもの。もちろんどの曲も大切なのですが、セルフカバーはリラックスした気分で歌いたいと思ったのです。気負うことなく歌うことができたのは、懐かしい方々のエールに包まれていたからだという気がするのです。たとえば「セプテンバー物語」の収録では、松本先生や林先生が見守ってくださっているような感覚を覚え、「マリンブルーの恋人達」の収録では、他界されたシンガーソングライターの村田和人さんが喜んでくださっているように感じて、とても心強かったです。
「lapis lazuli」「マリンブルーの恋人達」「青い鳥」「蒼」と、タイトルにブルーのつく作品が多いのですが、実はブルーには「未散」という私の名前に由来する思い入れがあります。実は子どもの頃は自分の名前が嫌いだったのです。そこで母に「どうしてこんな名前にしたの?」と問いただしたところ、「散」という文字が入るのはどうかなと思ったけれど、「未だ散らず」延いては「永遠に咲き続ける」という意味で名づけたのだと教えてくれました。
それからもう一つ、母はメーテルリンクの「青い鳥」という童話も意識していたと言います。チルチルとミチルというきょうだいのように、自分の力で幸せを探して欲しいという願いが込めれていたのだと知ってなるほどと。以来、幸せを象徴する「青い鳥」のブルーが私のテーマカラーになりました。自分の力で幸せを探して探してたどり着いた『Sing for you…』というアルバムのテーマは「私自身」だと言えるかもしれません。
これからも、再び歌う機会を与えていただいたことに対する感謝を忘れず、児島未散らしさを大切にしながらも、枝葉を伸ばす柔軟さを備えて歌を紡いでいきたいと思っています。
27年ぶりとなるアルバム『Sing for you…』
デビュー35周年を迎えた 児島未散大ヒット曲「ジプシー」(ライオン『プレーン&リッチ』CMソング)、デビュー曲 「セプテンバー物語」等 セルフカバー+書き下ろし新曲含む、児島未散渾身の再活動後第一弾アルバムが完成! (C)RS