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時々ヘルマンさんになる
ロシアによるウクライナ侵攻から10カ月を迎えようとしている。朝の食卓にニコライさんが座っている感じになってきた。ニコライさんは、時々なぜか「ヘルマンさん」になる。どっちでもいいのだが、私の虫の居所が悪いと「ヘルマンはドイツ人の名前だよ。昨日はニコライさんだったでしょ」となってしまう。
ロシア軍に破壊されたウクライナの惨状や周辺国に避難した人たちの写真や映像が増えるにつけ、「かわいそうに」と心を痛めている。私が怒りを時々、爆発させてしまうのは、母が「ロシア(ソ連)は満州にも攻めこんできた。ケシカラン国だ」という時だ。「ママのパパはロシア語ができたので、町を破壊しないようにロシア人と交渉した。だから奉天はウクライナみたいにならなかった」とも。
ロシアは「ケシカラン」けれど、日本だって「ケシカラン」でしょう。私は、「満州は、日本が中国東北部を侵略して、ひと様の土地に作った国でしょ。偉そうなこと言えないと思うよ」と言い返す。かつても満州国についてこんな会話をした。以前だと母は「でも、日本は満州で道路や鉄道を作ったりしてよいことをした」と自民党の爺さん政治家のような反論をしてきた。
満州で優雅な生活をしていたせいか、満州礼賛に一点の曇りもないのだ。そのたびに、私は「よ~く、考えて。逆に中国が日本に進出してきて、日本の中に国を作ったらどう思う? 私はいくら立派な道路や鉄道を作ってくれても嫌だね」と再反論した。母はむきになって「中国と日本は違う」。「何が違う」とか言い合ったものだ。