嫁の務めを果たそうとがむしゃらに

2番目に赴任した学校で夫の良英さんと出会いました。あるとき、酔っぱらった良英さんを介抱したのが親しくなったきっかけ。職場恋愛みたいなもんですね。26歳のときに、夫が両親と暮らすこの家に嫁いできました。

結婚後は、教員の仕事と農作業と家事をこなすのに必死で。家族の食事を作るのも、五右衛門風呂を薪で沸かすのも、もちろん嫁である私の仕事です。学校が終わったら猛スピードで自転車を漕いで帰り、日が暮れるまで畑仕事、それが終わると晩ご飯の支度をします。

なにせ、本格的な農業の経験がないでしょう。慣れるまでは本当に苦しかった。嫁としての務めを果たしたい一心で頑張りました。

でもね、幸いなことに、お姑さんが優しくてハイカラな人だったんです。薪を背負って町に売りに出かけたときに、映画を観るのを楽しみにしていてね。帰ってくると感想をうれしそうに話してくれました。それに、当時珍しかったソーセージをお土産に買ってきては、「はい、明日のお弁当にどうぞ」って。

反対に、お舅さんは古武士みたいな人。村長さんを務めていて、威厳のある人でした。

つらかったのは、子どもを授からなかったことです。代々続く農家に嫁ぎながら後継ぎが産めないなんて。もし私が、嫁という役割しか持っていなかったら、この家にい続けることはできなかったと思います。先生として、子どもたちを愛せたから、何とか頑張れた。

それでも、舅に続いて姑を介護することになったときは、さすがに仕事を辞めようかと悩みましたねえ。思い詰めて校長先生に相談したら、「あなたは、仕事を辞めちゃいかん。定年まで続けなさい」ときっぱり。その一言で思いとどまりました。

介護は、近所に住む親戚のおばさんに助けてもらいながら、何とかやり遂げたんです。

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