和田先生「人に厳しくなる本当の理由は、自分自身にあります」(写真提供:Photo AC)
65歳以下の場合、うつ病にかかる割合はおよそ3%。それが、65歳以上になると5%に増えるといわれています。定年退職後に自由な時間を楽しむはずが、不安やストレスで悲観的に日々を過ごしている方も多くいらっしゃいます。「65歳から先、体と脳は確実に老いていくが、心だけは、自分次第で若がえる」と語るのは、高齢者専門の精神科医である和田秀樹先生。和田先生いわく「幸せは『なる』ものではなく“感じる”もの」だそうで――。

一方的に決めつけるからストレスが生じる

一つ、質問です。自分が休むヒマもなく掃除をしているというのに、ともに暮らす人がソファでゴロンとしていたら、あなたはどう感じますか。

その答えで、「かくあるべし思考(物事を「こうあるべし」と決めつけ、それに反することが許せず、不安を高めていく思考のあり方)」に縛られやすいかどうかが、だいたいわかります。多くの場合、「かくあるべし思考」に縛られやすい人は、自分に厳しい一方で、人にも厳しくなっています。

たとえば、自分が掃除をしているときに、「夫がソファで寝転んでいるのを見ると無性に腹が立つ」という女性たちの嘆きを聞くことが、多々あります。

夫の気持ちばかりを代弁するつもりではありませんが、夫が掃除を手伝わずにゴロゴロしているのは、妻を挑発したいわけではないのです。

おそらく、部屋が散らかっていても気にならないだけでしょう。そんな夫に腹が立つのは、妻に「家はキレイにしておくべき」という思考の偏りがあるためです。

一方、掃除をしない妻に、「部屋が汚い」と文句をいう夫もいます。これも、夫の思考の偏りから出てくる言葉です。

「部屋はキレイなほうがいい」と思っていながら自ら動かず、妻に文句をいうのは、「掃除は女がするもの」という古典的な「かくあるべし思考」に囚われている証拠です。