鎌田先生「生き方上手の人は、『他力』を信じています」(写真:本社写真部)
国連が設立した「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が毎年発表する「世界幸福度ランキング」。2023年、日本は総合点で世界47位と発表されました。先進国では下位の部類に入る日本。そのようななか「こんな閉塞した時代にこそ『わがまま』が大事になるのです」と話すのは、医師で作家の鎌田實先生。鎌田先生「生き方上手の人は、『他力』を信じています」と言っていて――。

見返りを求めるのは善ではない

「お布施(ふせ)」という言葉を聞いたことがあるはずです。これは本来「施しをする」という意味の「布施」から来たもので、仏教の修行のひとつです。

人間は欲望の塊で、これを「煩悩」と呼びますが、その欲望を“放していく”ための修行が「布施」。「もっとほしい」という気持ちをなくしていくことです。

それが人が正しく生きる道、つまり「善」ということなのです。

善をなすには、人に親切にすること。たとえば電車のなかで、自分が座りたいと思っていても、他人に席を譲るのも布施です。ただこの場合、万が一、お礼を言われなくても腹を立ててはいけない。

いいことをしたのに見返りがないと腹が立ちますが、浄土真宗の開祖である親鸞は「見返りを求めるのは善ではない」と諭しています。見返りなど求めずに、ひたすら善に励めということなのです。

この修行はとても大事。ギリギリを生きていると、心の余裕がなくなり、「ありがとう」が言えなくなるもの。これが現実です。

「ありがとう」の見返りを求めない生き方が、かえってすっきりしておもしろくなるのです。