100歳の目標もすでに決まっている

メジャーリーガーの大谷翔平選手は、ベースボールの世界で誰もなしえなかった投打の二刀流に挑戦し、見事に成功させた。「二刀流なんて誰もやっていないから無理だ」と最初から諦めず、それを実現するための挑戦をスタートさせたからこそ、今の大活躍があるのだろう。

もちろん誰もが大谷選手のようになれるものではない。まして、高齢者ならなおさらだ。

しかし、地球上に生かされた我々人間のすべてに、スタートするチャンスはある。年齢は関係ない。何歳になっても再出発すればいい。

大谷選手もそうだと思うが、私自身も「なにがなんでもやってやろう」という確固たるぶれない気持ちを大切にしている。

自分が決めた目標、向かった道へまっしぐらに行こうという強い気持ちでの取り組みが、人間が限界を超えることにつながる。

そしてもうひとつ大切なことはその状態を心から楽しむこと。「楽しい」と思うことは、人間が限界突破を目指すうえでの原動力になる。グラウンド上の大谷選手は本当に楽しそうではないか。

90歳になった今の私は、自分の年齢や身体的なハンディキャップを素直に認めて、それをベースに目標を決める。

60代の頃とは肉体的なベースが違うが、目標へ向かう原点である《想い》」は変わらない。

これからどれほど回復できるかはわからない。だが、リハビリを続け、もっと歩けるように、もっとスキーができるようにというのが日々の目標である。

そして、100歳へ向けた大きな目標もすでに考えている。

まず、再び自分の足でネパールのエベレスト街道を歩き、できればエベレストのベースキャンプまでもう一度行ってみたい。

また、ウクライナに平和が訪れ、政治情勢が安定すれば、7大陸最高峰のひとつであるロシアのエルブルースに登頂し、そこでスキー滑走をしてみたい。

エルブルースは今の自分の状況で登ることは難しくとも、一部、雪上車が使えれば山頂近くまで上り、スキーをすることができるのではないか。

やはり日本においては富士山、そして世界に目を向ければ7大陸最高峰、そうした素晴らしい山々は、ロマンや冒険心をかき立ててくれる。

もう一度確認しよう。人生にもう遅いはない。いつも今からがスタートだ。それは誰にでも言えることだ。

※本稿は、『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』(主婦と生活社)の一部を再編集したものです。


諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』(主婦と生活社)

1960年代から90年代は、エベレストや富士山直滑降、世界7大陸最高峰からのスキー直滑降など、前人未踏の記録達成。2000年代は、70歳を過ぎてからの三度のエベレスト登頂や、86歳での南米最高峰の山・アコンカグアへの登頂挑戦。冒険家、三浦雄一郎さん(90歳)は、人生の各ステージで、そのときの自分にできる最大限の闘いを続けてきました。その稀代の冒険家が、「要介護4」の状況からのリハビリ生活のなかでめざす“次の冒険のステージ”とは?障がいを持つ身体であろうと、他者のサポートを得ながら臨む “新たな冒険”。人は、何歳になっても、あるいはどんな障がいを持っていても、「挑戦」することができる!