さださん「今、日本語が不自由な日本人が増えつつあるんですよ」(写真提供:講談社)
2023年10月25日に歌手として50周年を迎え、記念コンサートツアー中のさだまさしさん。今回はそんなさださんと、国際間のコーディネーターとして長年活躍し、現在は国際NGO 認定NPO法人 AAR Japan[難民を助ける会]の副会長を務める加藤タキさんの対談のようすをお届けします。さださんは「今、日本語が不自由な日本人が増えつつあるんですよ」と言っていて――。

日本語が不自由な日本人

まさし ルーマニアのシオランという哲学者による「祖国とは国語なり」という言葉があって、僕これ好きなんですよ。

線を引いて国境を決めるんじゃなくて、その人が何語を喋ってるかを聞きましょう、それがその人の祖国ですよという。これはルーマニアという、あちこちから侵略された国の人らしい言葉だなと思って僕はいつも感動するんだけど。

今、日本語が不自由な日本人が増えつつあるんですよ。タキ姐、これはどうしたらいい? 日本語が通じないからみんな話しながらイライラしている。自分の言いたいことも伝えられない。

タキ 例えばまさし君がおかしいなと思ったら、「君ね」って言って、ちょっと親身になる時間を作って、「君が言いたいこと、ちゃんと伝わってこないんだけど、伝わっていないってこと自体わかってる?」って、やっぱり聞いてあげたらいいんじゃないの?

まさし 聞いてあげるのはいいんだけど、聞いてあげても要領を得ない子が多過ぎてね。それで、ある程度大人になってくると自分に自信を持ってるから、自分の価値観を絶対曲げない。こんなとき、自分は無力だなと思うし、自分の日本語力もまだまだだと思うね。

タキ まさし君の日本語力は超一流ですよ~。ただ、人を変えようと思わないで、そんなときは自分がやっぱり変わるしかない。

まさし 自分が変わるしかないんだねぇ。

タキ 妥協するっていうふうに変わるのか、やっぱり説得しようとするのか、それは今の状況のためだけじゃなくて、その人の将来だったり。だから、どこまで自分がその人に関わりたいかでしょうね、やっぱり。関わりたくなければ、ほっときゃいいんじゃない?