映像ディレクター・映画監督の信友直子さんによる、認知症の母・文子さんと老老介護をする父・良則さんの姿を描いたドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』は大ヒット作品に。そして母・文子さんとのお別れを描いた続編『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』の公開から2年半、104歳になった良則さんは、広島・呉でひとり暮らしを続けています。笑いと涙に満ちた信友家の物語から、人生を振り返るきっかけを得る人も多いはず。そこで、直子さんがその様子を綴った『あの世でも仲良う暮らそうや』から、一部抜粋してご紹介します。
奇跡の復活から13日間
毎日短時間ではありましたが面会が許されたので、父と私は連日、母の元に通いました。
すると危篤だった母は、毎日父の声が聞けるからでしょう、その後13日間も頑張ってくれたのです。
その13日間、私が心がけたのは「母は楽しいことが好きな人だから、母との笑える思い出を思いつく限り話そう」ということ。なので母の病室は、私が笑い話を披露し、父と私の笑い声が響くという、少し不謹慎な空間になりました。
母はその中にいて、もう反応はなく目もつぶったままでしたが、
「お母さん、この話覚えとる?」
と聞くといつもギューッと手を握ってくれたので、「ああ、お母さんも懐かしいんじゃね。きっと心の中では大笑いしよるね」と胸があつくなったものです。