〈発売中の『婦人公論』3月号から記事を先出し!〉
演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続ける名優たち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が聞く。第38回は俳優・歌手の岡本健一さん。(撮影:岡本隆史)
演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続ける名優たち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が聞く。第38回は俳優・歌手の岡本健一さん。(撮影:岡本隆史)
「泣きゃいいってもんじゃないわよ」
劇的人生を色濃く生きて、転機となるエピソード満載だと思うけれど、第3の転機はやはり森光子さんや奈良岡朋子さんとの出会い?
――そうですね。10代の頃に『放浪記』を観に行って、森さんの楽屋を訪ねたら、そこに日夏京子役の奈良岡さんがいて、「あなた何やってる人?」って訊かれた。男闘呼組というバンドと舞台もやってます、って言ったら興味を持ってくれて、俺の出てる芝居を観に来てくれるようになった。
ある時、奈良岡さんに、「俺、劇団民藝に入りたい」って言ったら、「それは無理よ、あなたと同じ世代の子がいっぱいいるんだから。そっちが大事なの。あなたに役を取られちゃうでしょ」。そっか、ダメなんだ。じゃあ何とか共演できる役者になるように頑張ります、って言って。
それからはよくお茶しながら芝居の話をしたり、ご飯行ったりしてたんだけど、40歳の時に初めて芝居で声を掛けてくださったのが、2人で手紙のやりとりを朗読する『ラヴ・レターズ』ですね。