「がんばれ」より「ありがとう」を(写真提供:Photo AC)

「寝たきりになってまで長生きしたくない…」そんな不安を抱える高齢者が増えています。2000人以上を看取った在宅緩和ケア医・萬田緑平先生は、【延命より満足、治療より尊厳を】と提唱。必ずしも「医療を拒否する」のではなく、その向き合い方を考えながら、どうやったら最期まで自分らしく幸せに「生ききる」ことができるのか。萬田先生によると、そのヒントは「歩く」ことにありました。著書『棺桶まで歩こう』より、一部を抜粋して紹介します。

ほめてあげよう、ありがとうと言おう

ここに1本の動画があります。

「先生のおかげでこれ以上の幸せはありません。ほんとうにうれしいです。周りもみんな、先生の……。これからもよろしくお願いします。生きてるうちはお願いします」

笑顔でそう語る、おばあちゃんが映っています。

仮にAさんとしましょう。彼女が亡くなる5日前に撮影した動画です。僕はそろそろだろうと思ったので、Aさんにそう伝えると「自分もそろそろだと思ってる」。

そこで、この2カ月を振り返る動画を撮影しました。

だからAさんは「生きてるうちは、もうちょっとお願いします」と言っているのです。