住宅や商店の前、はたまた街路樹の植え込みや通学路。人の暮らしのあるところで必ずや目にするのが植物の鉢植えだ。その近くをよく見ると、アスファルトのすき間からは小さな草花が芽吹いている。人と自然とのそんなコラボレーションを「路上園芸」と称して楽しむ方法が、今、密かなブームになっているようで──路上園芸鑑賞家として活動する村田あやこさんに聞きました。(構成=山田真理 撮影=大河内禎)
はじまりは商店裏にあった植木鉢
「路上園芸」とは、住宅やお店の前で個人が楽しみのために育てている植物や、コンクリートのすき間などに自然に生える緑のこと。それを散歩の途中に見つけては、テーマごとに分類したり季節ごとに観察をしたりする「路上園芸鑑賞家」の活動を10年ほど前から続けています。
きっかけは、当時住んでいた家の近所の商店裏にあった植木鉢でした。雨水でボロボロに劣化した鉢の中には、雑草に囲まれて不敵に笑うタヌキの置物。その光景が妙に気になって、ガラケーで写真を撮りました。すると他の場所でも、路上の植木鉢が目に留まるようになったんですね。
福岡で生まれ育ち、大学はキャンパス内に自然林の広がる北海道だったりと、自然の多い場所で暮らしてきました。東京の大学院に進み、卒業後はメーカーに勤めたのですが、2年ほどで退職。将来にわたって続けたいことは何かと考えたとき、植物にかかわることがしたいと思い、植物で空間をデザインする仕事を目指すことに。園芸装飾技能士の資格を取る勉強のかたわら、アルバイトで始めたのが、デパートの店内に飾る植物の手入れをする仕事でした。