元新聞記者で、アフロヘアがトレードマークの稲垣えみ子さん。朝日新聞社を2016年に早期退社した後、50歳を過ぎて始めたのはピアノでした。「ずっとやりたくても、できなかったこと」として人生後半戦に始めたピアノは、いまを楽しむことの幸せを教えてくれたと言います。その稲垣さん、練習の頻度について「あくまで趣味だし、週2程度でいいだろう」と考えていましたが、先生からはまさかの反応が戻ってきたそうで――。
練習はどのくらいやるべきか
40年ぶりのピアノを再開した時、真っ先に先生に聞いたこと。
「あのー、練習って通常、どのくらいするものなんでしょうかね?」
そうなのだ。まずここからわからなかった。
何しろ子供の頃は、とにかくメンドクサイ練習などしたくなかった。ゆえに、母に「練習しなさい!」と怒られる。渋々やる。でも嫌だからすぐしなくなる……要するに、練習とは「嫌々する」か「しない」かの2択であって、「どのくらい」などという高度な設問は我がピアノ辞書には存在すらしなかったのである。
そう思うと、まあ私もそこそこ成長したのかもしれない。
それはさておき、先生のお答えである。
「あ、練習はできれば毎日してください」
え、そ……そうなんスか!?
もちろんやればやるほど良いに決まっていることは私にもわかる。にしても、この答えは想定外であった。だって所詮はおばはんの趣味であり、そんなにガツガツしたいわけじゃない。
練習がイヤというわけではないが、自分のペースで、無理なく、楽しんで練習するっていうのも大人の世界には「アリ」だよねと思っていた。例えば週2回とかね。つまりは毎日練習するつもりなんてさらさらなかった。大人になった今こそ、優雅に練習し優雅にピアノを楽しめるはずと、勝手に決めてかかっていたのである。
ところが……まさかの毎日!
思わず「ウッ」となる。
いやまてよ。もしや先生、何か勘違いをしておられるのでは? 何しろ先生はプロのピアニスト。本気の人である。ゆえに、生徒も当然、本気で高いレベルのものを目指しているはずと思い込んでおられるのでは? いやいや私、そういうんじゃないんで! あくまで趣味でちょっとピアノが弾けたらイイなとか軽く思ってるだけでして……。