「美味しい」と感じる日々の食事。しかし、その「美味しさ」は舌だけで決まるものではなく、見た目や咀嚼音なども影響しています。九州大学大学院比較社会文化研究院講師の源河先生によれば、「視覚や聴覚の情報によって、私たちは<美味しさ>を錯覚することすらある」とのこと。たとえば、赤く着色された白ワインは、専門家でも見抜くことが難しいそうで――。
「美味しさ」は聞こえる音でも変わる
まず、イグノーベル賞をとったチャールズ・スペンスの研究を紹介しよう。それは「ソニックチップ」という名前でよく知られている(スペンス[2018]p.16、ハーツ[2018]pp.176-177)。
その実験の参加者はマイクとイヤホンをつけてポテトチップスを食べる。マイクは口のなかでポテトチップスが噛み砕かれたときの音を拾っており、その音はイヤホンから聞こえるようになっている。
つまり、実験参加者は自分の咀嚼音を聞くのだ。ただし、イヤホンから流れる音はさまざまに加工することができる。参加者が聞く咀嚼音は、音量や周波数が上げられたり下げられたりしているのだ。