車を購入したというマリさん。自ら運転することであらためて見えてきたものとは(写真提供:photoAC)
「旅する漫画家」として世界を駆けてきたヤマザキマリさん。コロナ禍ではイタリアにいる家族と離れ、日本に長期滞在することになりました。しかしマリさんいわく、思いがけなく移動の自由を奪われた毎日の中でむしろ考える機会が増え、多くの気づきや発見もあったそうです。たとえば自ら車の運転をすることになって、東京という都市についてより深く見えてきたものもあったようで――。

コロナ禍で車を所有して

新しい環境の生活をそれなりに楽しんではいても、やはり「移動」をまったくしないことでの鬱屈感は、次第にストレスになっていました。

そこでちょうど感染の第5波が落ち着いた頃、東京でも車を所有することにしました。溜まりに溜まったストレスを車を運転することでまず解消しようと考えたのです。東京を拠点にするなら自分の車は必要だと前々から思っていたのに加え、周囲の車好きな人に勢いをつけてもらったことで決断することができました。

自分でハンドルを握っていると、アイデアが湧くときがよくあります。乗り物を駆使して「動いている」という感覚が、スイッチを切り替えて、発想を生み出そうという気持ちをもたらすのだと思います。

また、自分で運転することで、東京の土地への勘を体で理解したいという動機もありました。それまでは仕事のときはタクシーに乗ることが多かったのですが、車をもつようになってからは自分で運転する機会を積極的に増やしています。