養老先生への質問

Q.大きな災害とか事故が起きると、「想定外」という言葉で無責任を決めこむ風潮があります。どう思いますか。

A.想定外という人は、何事も想定できるという暗黙の前提を持っているんですよ。そこなんですよ、問題なのは。なんでも想定し、防げると思っている。でも、そうはいかない。よく危機管理というけれど、どうしていいかわからないから危機なんで、全部を「ああすれば、こうなる」と想定し、計算なんかすることができるわけがない。

そもそも、自分が生まれてきたことが想定外でしょう。

 

※本稿は、『なるようになる。――僕はこんなふうに生きてきた』(中央公論新社)の一部を再編集したものです


『なるようになる。――僕はこんなふうに生きてきた』(著:養老 孟司/中央公論新社)

人生は、なるようになる――これがひとまずの結論です。幼少期の最初の記憶から、虫と猫とバカの壁と出会った86年を語りつくす。読売新聞の好評連載「時代の証言者」(聞き手・鵜飼哲夫)を大幅加筆、「50の質問」を増補。養老先生はじめての自伝。