「今回の入院を境に、ビールが飲めなくなってしまったの。かつては〈こんな美味しいものはほかにない〉と思うほど好きだったのに、今は魅力を感じない」(撮影:大河内 禎)
サラリーマンの日常を軽妙に描いた漫画や、独特な視点で食を掘り下げたエッセイを半世紀以上にわたり発表し続けている東海林さだおさん、85歳。複数の連載を抱え多忙を極めるなか、2023年6月、脳梗塞を患った。入院をきっかけに「食生活の大変革」があったという(構成:山田真理 撮影:大河内 禎)

<前編よりつづく

入院を境に、大好きなビールが……

脳梗塞は再発しやすい病気だから、塩分やお酒は控えめにとお医者さんには言われています。本当はそうしなきゃいけないし、退院してしばらくは気にしていたのだけど、だんだん続かなくなってきてね。

「血液サラサラの薬も飲んでいるから大丈夫かな」と考えて、最近はあまり細かいことは気にせず食べちゃってます。食べる量が入院前の半分近くに減ったから、その分、摂取する塩分量も少なくなったんじゃないか――って、これは言い訳ですけどね。

自宅では、妻が5品くらい用意してくれる料理から少しずつつまむようにし、コンビニで買うお惣菜は小さなパックを選んでいます。

コンビニのお惣菜といえば、以前は「ビールに合う」ことが絶対の条件だったんですよ。お酒のつまみになるような、少し脂っこくて味が濃いもの。それはほとんど食べなくなった。