我慢しないで「いい思い」をする

たくさんの高齢者と向き合ってきて、私が切実に感じているのは、子どもに財産は残せても、自分にとっての財産は「思い出」しかないんだな……ということです。

お金はあの世まで持っていけませんが、思い出だけは、亡くなる間際になっても、自分の脳裏に残ります。

(写真提供:Photo AC)

人生の最期に思い出しか残らないならば、無理に我慢をしないで、「いい思いをたくさんした方がいいな」と考えています。

「あれをやりたかった」とか、「あそこに行きたかった」と思い残すことがありそうならば、今からでも、やることはできます。

現在のプレッシャーや、今やらなければならないことに、焦る必要はありません。

それがうまくいかなくても、長い人生にとっては、たいした問題ではないからです。

今の一瞬を楽しむことができれば、それが「いい思い出」になって残る……というのが、精神科医としての私の人生観です。