(撮影:浅井佳代子)
現在発売中の『婦人公論』2025年10月号の表紙は、歌手の由紀さおりさん。昨年の夏、ベッドから落ちて鎖骨を骨折してしまったと言います。それでも、コルセットをしてステージに立ったそうで――。発売中の本誌から、特別に記事を先行公開いたします。(撮影:浅井佳代子 構成:丸山あかね)

守りたいもの

78歳にもなると、日々想定外の出来事が起こるものですね。昨年の夏は、ベッドから落ちて鎖骨を骨折してしまいました。キングサイズのベッドなのに、よほど寝相が悪かったのかしら。(笑)

衝撃で目が覚め、起き上がろうとしたら激痛が走って。翌日は石川県でコンサートの予定だったので茫然自失。でも、気を取り直して横たわったまま「♪ハ~」と発声してみると、問題なく出たのです。

これなら《イケる》と判断して整形外科を受診すると、先生から急いで手術をすべきだと言われて断固拒否(笑)。コルセットで固めてもらって金沢へ向かい、翌日、予定通りステージに立ちました。

私が焦ったり落ち込んだりすれば、オーケストラのみなさんにも伝染してしまいますから、本番では骨折ジョークを飛ばしてね。お客さまにも笑っていただき、2日間のコンサートはなんとか成功しました。

マイナスの状況をどう逆転させるか瞬時に考えるのは、長年の歌手活動で身についた癖のようなものですね。