ぼんこさんの瞳は希望に輝いていた

そんな私の感想を聞いたぼんこさんは、「そうね」と微笑んだ。

「家をなくしたり、親御さんやきょうだいを失ったり。皆が辛い思いをしたけど、平和になったんだから早く『暮らし』を取り戻そうって、頑張ったのよ」

「やっと自由が戻った! これからは、なんでもできる! 皆、そういう気持ちが強かったの」

そう語るぼんこさんの瞳は、まるで当時に返ったように、希望に輝いていた。

「それにしても、お庭でバレエのお稽古よ! 考えられないでしょう!」

私が頷くよりも早く、ぼんこさんは可笑しげに笑った。

彼女のお話を聞きながら、タカラジェンヌを目指していた頃の自分自身を、私は思い出していた。実力も自信も無く、将来への不安を抱えてはいたが、宝塚歌劇への熱い気持ちがあった。時代は違っても同じ夢を抱いていた人たちに、私は友情にも似た親しみを感じた。

瓦礫を押し上げて、雑草は芽吹く。焼け跡がそこここに残る街にも、ステップを踏む若者たちの靴音が戻ってきた。ぼんこさんの言葉は、明日に向かって前進した人たちの姿をくっきりと浮かび上がらせる。

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