本人が希望して、書類に書き残しても…

延命治療とは本来「無駄な治療」という意味。死んでほしくない家族にとっては、すべての医療は「必要な治療」となります。

その時家族は、延命治療だと思っていないのです。

ある時、危篤状態になり「点滴してほしくない」、つまり延命治療をしてほしくないという男性患者がいました。しかし、その息子は「点滴してください」と強く迫ります。

このケースでは、父親である患者本人が「延命治療をしないでほしい」という意思を書き残しており、息子にその書類を持ってこさせました。

その書類に、息子も同意のサインをしています。すると息子は、「これは無効だ。この時と今と、気持ちは違うから」と言い張りました。

本人が希望しても、たとえ書類に書き残しても、こんなにも「延命治療をしない」選択は難しいのです。

 

延命治療を「しない」選択の難しさ(写真提供:Photo AC)