(イラスト:古村燿子)
自身の終末期について、「延命治療はしたくない」「痛い思いをせずに命を終えたい」という希望を持っている人も少なくないでしょう。しかし、思っているだけでは願いは叶えられません。何をどう決め、家族にどう伝えるか。多くの終末期患者を在宅で看取った医師が、その方法と大切さを教えます(構成:菊池亜希子 撮影:高岡弘 イラスト:古村燿子)

前編よりつづく

枯れるように死ぬほうが苦痛が伴わない

死の直前まで人間らしく生きて自然な最期を迎える「尊厳死」は、「まるで草木が枯れるように」静かに命を閉じていく。熱中症のイメージから「脱水=悪」と捉えられがちですが、終末期に限っては逆。徐々に脱水状態になっていくほうが、死の直前まで喋ることができ、苦痛が伴わないのです。

私はこれまで1500人以上を在宅で看取ってきましたが、終末期の点滴はゼロ、もしくはせいぜい200ccです。みなさん、苦しむことなく、最後まで家族と一言、二言、会話を交わしながら亡くなっていきます。

200ccというのは、水分を入れないことに家族が不安を感じたとき、少しだけ補給する、あくまでも「慰めの点滴」。ご本人でなく、家族への慰めです。終末期は水分を入れないほうがご本人がラクなので、理想はゼロ。15年以上前からそう言い続けてきたのですが、ようやく最近、在宅医療の現場では常識になりつつあります。

欧米では10年以上前から「緩和ケア=脱水」が常識です。日本ではモルヒネで痛みをとることが緩和ケアと思われていますね。もちろんそれも間違いではありません。しかし緩和ケアは「一に脱水、二に医療用麻酔」ということを、医療者はもちろん、みなが知るべきだと思います。

一方、延命治療を断らない場合、終末期に自力で食べられない患者に、病院によっては1日2Lもの水分を点滴するようです。過剰な水分が入れられた体内では、役割を終えようとしている心臓や肺などすべての臓器が悲鳴を上げます。

胸が苦しく、呼吸ができなくなって口から泡を吹く。まさに溺れている状況です。苦しくて暴れるから腕を結束されてしまったり……。そういうケースが減ることを望んでいます。