今になって鎌田がぶつかった壁
アルバイトを掛け持ちし、ときには得意のマージャンで学費を稼ぎながら、鎌田は大学を卒業し、医者になった。
しかし今、こう思うのだ。養父の首を絞めて、泣きながら自由をもらったとき、自分は家を出て行くべきだった。そして自分の足で、もっと困難や苦悩や孤独と向き合うべきだったのだと。
自分の中の怒りを、もっと徹底して怒ればよかった。そして自分の冷たさや自我の大きさに気づいていれば、もっと大きな脱皮ができたのではないか。もっと大きな世界へのつながりができたのではないか。
それなのに、「父に手をかけてしまった」と悔やみ、自分を責め、より一層、「いい子」の鎧に自分を閉じ込めるようになってしまった。
これが今になって鎌田がぶつかった壁だ。