東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任し、現在は名誉院長を務める医師・作家の鎌田實さん。長年地域医療に携わる傍ら、難民支援や被災地支援にも力を注いでいます。そこで今回は、作家・ノンフィクションライターの瀬戸内みなみさんが各界著名人の人生に迫った連載を書籍化した『わが人生に悔いなし』から一部を抜粋し、鎌田さんの言葉をお届けします。
養子であることを37歳まで知らなかった
鎌田は実の両親の顔を知らない。愛されたことも抱きしめられたことも、まったく記憶がない。1歳のときに養父母に引き取られ、ひとり息子として育てられた。
自分が養子であることを鎌田は37歳になるまで知らなかった。養父母は決して鎌田自身に知られまいと、隠し通した。そして鎌田も、その事実を偶然知ってしまったということを、養父母に最後まで知らせなかった。
そのせいなのだろうか。鎌田は子どものころから、いつも「いい子」だったという。反抗期らしい反抗期もなかった。
「子どものころから貧乏でどこにも行けない、連れて行ってもらえないから、本をたくさん読んでいた。そうやって好奇心を広げたから、いろんな世界が頭のなかにいっぱい入っていました」