漢語は漢字と結び付いていないと
1651年には、フランス人宣教師ロードによって編纂された『ベトナム語・ポルトガル語・ラテン語辞典』が刊行される。ここで考案されたアルファベットの表記法が、現在のクォック・グーにつながっているのである。19世紀にはベトナムはフランスの植民地となり、中国の影響力は減退した。こうしてベトナムも漢字文化圏から脱却したのである。
この結果、現代の朝鮮語やベトナム語では、漢語に基づく語が多数あるにもかかわらず、それらが漢字で表記されることはないため、漢語であることがわかりにくくなっている。
例えばハングルで「イルボン」と表記されたものが、実は「日本」を指しているとは、すぐには思いつかないだろう。クォック・グーの「Nhat Ban(ニャットバン)」も同様である。
「イルボン」「ニャットバン」という発音だけなら、何となく「ニッポン」という語を想起させるのであるが、やはり漢語は漢字と結び付いていないと、なかなかピンとこない。
※本稿は、『漢字と音読みの謎を解く-呉音・漢音・唐音の奥深い世界』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『漢字と音読みの謎を解く-呉音・漢音・唐音の奥深い世界』(著:中澤信幸/中央公論新社)
遣唐使がもたらした漢音、仏教用語に多い呉音、同じ仏教でも禅宗にまつわる唐音。
これらの音が日本に伝来した時代や経路、定着した経緯を、音韻史の専門家がわかりやすく解説。
ややこしくて面白い、音読みの世界への招待。




