都内で夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしのフリーランス生活を送る、元新聞記者の稲垣えみ子さん。50歳で会社を辞めたことをきっかけに「買わない生活」をはじめた稲垣さんは「私は『買わない』ことですべてを手に入れたのだ」と語ります。そこで今回は稲垣さんのエッセイ『買わない生活』より一部を抜粋してお届けします。
必須メンバーの基礎化粧品
化粧品というものに馴染んだ方ならわかっていただけるかと思うが、「大人のお肌」というものは、基礎化粧品なくしては成り立たないのである。歳を重ねるにつれシミだのシワだの肌のトラブルは増える一方。故に小金を持った女の基礎化粧品は年を重ねるごとに充実の一途をたどっていくものなのである。
潤い成分たっぷりのクレンジングミルク、化粧水、乳液、クリーム、さらには美容液、パック、アイクリーム、ボディクリーム……などなど、これがさらに朝用、夜用などに分かれていったりして、我が基礎化粧品はとどまるところを知らぬ勢いで増え続けた。そしてこの金に糸目をつけぬ莫大な投資の甲斐あって、私のお肌はなんとかシワもシミもそこそこ阻止しつつ中年期に突入。私はそのことを密やかな誇りとしていたのである。
つまりはこのずらりと充実した基礎化粧品のラインナップは、我が貴重なプライドを形成する必須メンバーだったのだ。
それが……入らない。置く場所がまったくない!