結局、スペインには10日間いて、本来ならばそこで帰国するのだが、編集者がその後にフランス4泊をおまけでつけてくれた。

スペインに比べてフランスはたしかに垢抜けてはいたが、人柄はずいぶん違った。デパートに売っているような化粧品ではなく、カジュアルな店でお土産の口紅を買おうとしたら、店の女の子に無視された。

明らかに私よりも10歳は若いであろう子に、30歳を過ぎた女が無視されるというのはあまりない体験だが、それを見ていた他の若い店員さんが、謝りながら注文を受けてくれて、何とかお土産は買えた。

そのブランドの名前を見るたびに、そのことを思い出す。当然だが、誰もが意地悪でもないし、誰もが親切でもなかった。

2週間、東京を離れて帰国すると、時差ぼけはまったくなかったが、あまりに時間に追いまくられているような気がして、しばらくの間は感覚が戻らずにぼーっとしていた。

今はどうだか知らないけれど、フランスのテレビ局には日中でも休憩の時間があって、番組が映らなくなってしまう。四六時中、ずーっと番組が流れている日本が不思議だった。

海外に行くのは楽しいけれど、もともと出不精の私は、またもう一度行きたいかといわれると、電車で2時間くらいだったら、行ってもいいかなくらいの気持ちしかない。


※本稿は、『この家に生まれたことが失敗だった?』(群ようこ:著/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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『この家に生まれたことが失敗だった?』(著:群ようこ/KADOKAWA)

――お金に仕事、家庭運。考えてみれば70年、しでかしたりやられたりだった。

小説家・群ようこさんが綴る、家族、仕事、お金、そして70年の人生。
群さんならではの、ユーモアと温かな視点で軽妙に綴ったエッセイには、思わず共感し、心がふっと軽くなるエピソードが詰まっています。