触車事故防止要領が守られていない

この事故は見張員だけの問題ではなかった。見張員が見張りに専念していなかったのは、組織としての問題であった。

このときの保線作業の作業指示書の中には、見張員であるべき人物が、見張り以外の作業をおこなう人員として名が連ねてあった。つまり、はなから見張りに専念することが計画されていなかった。

会社で定めた触車事故防止要領の教育が徹底されていなかったようである。運輸安全委員会がこの会社の保安係員8人にアンケートをおこなったところ、見張員の専念義務等に関して十分に理解できていなかったことが、その回答から明らかになっている。

過去にも同じような事故が起こっていたにもかかわらず、リスクに対する認識が低く、保線作業時の安全が徹底されていなかった。

※本稿は、『ミスによる事故をどう防ぐか-4種のヒューマンエラーと組織の安全文化』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
思い通りにできない、やり方がわからない…「ヒューマンエラー」の定義を心理学者が解説。防止するには<モノの改善>が必要なケースも…
患者を取り違えて手術…原因は<人間の情報処理>の中に。<トップダウン>について心理学者が解説
なぜ災害時に「きっと大丈夫」と思ってしまうのか?人間には「リスクが低いと思いたい力」が働いていて…心理学者が解説

『ミスによる事故をどう防ぐか-4種のヒューマンエラーと組織の安全文化』(著:松尾太加志/中央公論新社)

人は必ずミスをしてしまう。どうすればミスをしても事故に至らないようにできるか。

本書はミスの原因を4タイプに分類し、重大事故を例に示しながら防止策を検討する。

そして、真の原因である組織の問題を指摘し、安全文化の構築を提言する。