ハモンドオルガンを古関が弾くことに

戦災で親を亡くした孤児たちを慰め、励ましている。古関は「なんという愛らしく、優しく詩情に満ちた美しい詩であろう」と激賞した。

古関は菊田の歌詞に負けない、美しく明るいメロディーをつけた。付点音符により弾む長調で朗らかな曲調である。「とんがり帽子」を歌った川田は、当時の童謡歌手では一番の人気者であり、昭和20年大晦日の「紅白音楽試合」にも出場している。

放送開始直後は順調であったが、菊田の脚本が遅れはじめ、作曲が放送直前ということが多くなった。菊田からの高度な要求にも応えなければならないため、放送開始から3ヵ月が経つと、ハモンドオルガンを古関が弾くこととなった。小暮から電気的操作と、レジストレーション(音色構成)を習っている。これが古関とハモンドオルガンとの出会いであった。

毎回生放送で16インチの円盤に同時録音し、それをCIEに聴かせた。そして担当者からの意見を受けて、次回の番組づくりの参考とした。番組開始から半年後には月曜から金曜まで毎週5回の放送となった。それは全国の聴取者からもっと番組を聴きたいという要望に応えたものであった。

大人気の「鐘の鳴る丘」は、昭和25年12月29日に790回をもって終了した。

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