イラスト:丹下京子
手塩にかけて育てた娘・息子が、手のひらを返したような冷たい態度に。お相手に遠慮があるのか、親への思いを忘れたか――(「読者体験手記」より)

両家の顔合わせもないまま

長年恋人と同棲していた息子が、やっと結婚した。だが、妻となった人の親には一度も会ったことがない。息子の妻は京都出身で、こちらに来てアルバイトをしていた際に息子と知り合った。父親とは死別、母親は私より2歳年下で再婚しているとか。

息子たちが一緒に住み始めた頃、彼女の母親が年に3、4回も那覇に来ると聞き、顔合わせの食事くらいはするのかなと思っていた。だが、一度も誘われたことはない。息子にいつ聞いても「ちょうど京都に帰ったばかり」などと言う。

息子たち夫婦は私のマンションの近所に住んでいるらしい。どのアパートかは知らされていない。最初の頃はふたりで遊びに来ることもあったが、結婚後、行き来はまったくなくなった。ふたりは挙式せず、婚姻届を出しただけだ。

しかも息子の住所はいまだに私のマンションのままになっており、なかなか移そうとしない。重要なハガキや書類が届くと、私からメールでその都度知らせる。「住所変更の手続きをしたら」と言うと、息子はものすごく不機嫌になり、「なんでそんなことを言う」と怒る。好きで集めた大量のレコードも、実家に置きっぱなしで知らん顔。もう40歳になるというのにおかしな話である。息子の妻も同年代だ。

先日、スーパーで息子に会った。車で来ているだろうから送ってくれないかな、と期待したが、「気をつけて帰るんだよ」と小学生にでも言うような言葉をかけられたのみ。さては駐車場に停めた車で妻が待っていたのか。

息子は完全に妻の手のひらで転がされている。一所懸命働き、妻を職場に送迎。一度だけ弁当を作ってもらったと言って舞い上がっていた。