『今も未来も変わらない』第3話より(イラスト:丹羽庭)

――等身大の小説家の日常、とくに編集者のダメ出しに星子さんが落ち込むところには親近感を抱きました。あと、娘の拠(より)と彼氏とが出会うきっかけとなる場面。塾の掲示板の前で拠が夕食の献立表を見ている。なんでもない場面ですが、長嶋さんらしい好いシーンです。

長嶋 あれは実際、近所の塾が夜食を出しているんですよ。小説に書いたように掲示板に貼ってある献立が美味しそうなんです。白身魚のなんとかと書いてある文字面に腹がなるし、写真があるのもうれしい。子どもたちが夜、これを食うのかなと思ってね。

塾というのはいろんなメソッドで成り立っているものなんだけど、最後の決め手が晩飯なのかと。でも、それ大きいよね。僕も箸と茶碗をもって食べにいきたいくらい(笑)。こういうところに意識がいくようになったのは、自分が3年前から子育てのただなかに入ったというのもありますね。

――最後になりましたがタイトルの『今も未来も変わらない』。これは連載時の最終話からとられたのですね。

長嶋 タイトルをつけるのがいちばん楽しくてあまり迷わないのに、今回は最後まで迷ってしまった。本にする際にまとめて読み返してみたら、企んで書いたこともその場の反射神経で書いたものも「今と過去」の話になっている。作中作までもが過去からやって来た話だし。よく「今も昔も変わらない」と言われるけれども、それは「今も未来も変わらない」ということでもある。そこを見続けて書いてきた。結果、文学らしくもなったかなあと思っています。