バンクーバーのチャイナタウンにある中華会館内で出会った洪門のメンバー(左端と右から2番目)と筆者。2018年11月29日

秘密結社のマスク外交

結果、致公党による洪門外交も大きく拡大することになった。

たとえば致公党広東省委員会のホームページを見ると、2020年1月~6月だけで下記のような海外洪門関係者との接触が確認できる。なお、2020年1月20日以降は新型コロナウイルスの流行が表面化したため、各国の洪門との交流は(これでも)前年より減少している。

1月7日 オーストラリア洪門致公総堂中国語秘書林東が致公党広州市委員会を訪問。

1月10日 カナダ中国洪門民治党ロンドン支部主委の谷剣雲が致公党珠海市委員会を訪問。

1月15日 アメリカ至孝篤親総公所秘書長の陳建平、フィリピン中国洪門致公党総部副主席の林志謙、カナダ民治党の谷剣雲が、致公党広州市委員会を訪問。

1月16日 コスタリカ駐中国大使デルガードによる広東省江門市訪問に同行したコスタリカ洪門致公党主席の呉裕群、致公党江門市委員会主委の胡念芳と会見。

4月13日 同日までに、広東省各地の致公党委員会が新型コロナに苦しむ海外66の同胞団体にマスク合計46万4400枚と薬品400箱を送る。うち、洪門関係の組織であることが確認できる団体は、致公党広東省委員会からマスク3万枚を贈られたオーストラリア洪門致公総堂、致公党広州市委員会からマスクを贈られたアメリカ・フィラデルフィア洪門致公堂、カナダ全カナダ洪門民治党と同バンクーバー支部・ロンドン支部・カルガリー支部、中国洪門イギリス・マンチェスター支部、致公党佛山市委員会からマスク計3万枚を贈られたパナマ中国洪門致公党とコスタリカ洪門致公党など。

6月16日 台湾の国際洪門中華総会常務理事長の朱邦文率いるビジネス視察団が広東省東莞市を訪問、致公党東莞市委員会が接待。

※なお「主委」とは主任委員の略で、支部のリーダーのことである。また何度か登場する「ロンドン」は、カナダの地方都市の地名だ。

現在の致公党が洪門以来の儀礼を内部で残しているとは思えないが、海外の洪門組織との交流の際は「仁義の心」といった伝統的な要素が強調されることも少なくない。