と言うぼくも、売り上げが伸びるわけがないのに、「頑張って売り上げを伸ばしましょう」と会議で言ったりしていました。嘘を言っているので声にも迫力がなく、嘘を付くことで自分が恥ずかしくなり、穴でもあったら入りたいような気持ちになっていました。嘘は人間を弱くするのです。

会社を辞めてからは嘘をつく必要が全くないので、毎日快適な生活をしています。嘘がいかに精神と体に悪いかは、嘘をつかない生活をするとよくわかります。

例外は政治家ですね。政治家は嘘をつくのが仕事になっているので、平気で嘘が言える人が出世します。嘘か本当かということさえ、本人はわからなくなっているのではないですか。そういう人間を信用してはいけません。

会社を辞めて良かったことは他にもたくさんあります。会社に行く必要がないぶん、いつでも自分の好きなことが出来るし、会いたくない人には会わなくても良くなりました。

定年退職が近付いて来るにつれ、ウツになる人もいるそうですが、そんなに会社が楽しい所なのでしょうか。だいたい定年退職という言葉が良くないですね。定年退職した人をテーマにした内館牧子さんの『終わった人』という本がありましたが、定年退職というとどうしても「終わった人」だと自分も思い、人からも思われるところがあります。本当は、自由に生きることの始まりなのですから、定年退職の日は喜びの日になるはずです。

100歳まで生きられる時代と言われているのですから、60歳で定年退職しても、そこから何十年も生きて行かなければなりません。定年退職に悲観している場合ではないのです。

※次回配信は3月25日(木)の予定です

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