必要なのは発想の転換

Aさんと同様に、悔しさと虚しさを募らせた挙句、孤独だと感じている人は大勢います。

「息子夫婦が家を建てるときに金を工面してやったのに」「孫の学費を出したのは私なのに」……。なのに、こんなにぞんざいに扱われる覚えはないと情けなくなるというわけです。

気持ちは理解できますが、怒りや悲しみに浸かっているのは得策ではありません。それでは人生がもったいない。そこで発想の転換をしていただきたいのです。

お釈迦様の教えが記された『ダンマパダ』（真理のことば）には、こうあります。

「私には子がある。私には財がある」と思って愚かな者は悩む。

しかしすでに自己が自分のものではない。

ましてどうして子が自分のものであろうか。

どうして財が自分のものであろうか。」

『ブッダの真理のことば　感興のことば』（中村元訳・岩波文庫）より引用

子育ては大変です。とはいえ「育ててやったのに」とか、「お正月にも帰って来ない」などと不満を募らせるのは間違っています。子どもは親の所有物ではないのですから。

それに大変なことばかりではなかったはず。親が子どもから与えられるものの大きさと言ったら……。「愛される」ことより「愛する」ことで覚える愛のほうが深い。この慈悲愛こそが無形の財産です。

『ひとりの「さみしさ」とうまくやる本－孤独を楽しむ。』（著：大愚元勝／興陽館）
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私はAさんに「娘の力になってあげたと言いながら、その実、Aさんは娘さんに依存していたのですね」とお伝えしました。