「実は、出演交渉をしたときには、この映画が実現するかどうか、まだ目途が立っていなかったんですよ」

主演の3人は「この人しかいない!」

スタッフに限らず、出演してくれた俳優のみなさんも、この映画のテーマに共鳴してくれたのがありがたかった。

日記を書いた科学者をモデルにした主人公は、実験バカで、研究への情熱があふれるあまり、〈狂気〉さえも感じさせる石村修。この役を演じられるのは柳楽優弥くん以外に考えられないと脚本を送ったところ、翌日すぐに電話をくれて、「ぜひ!」と。そう言ってくれた気持ちが本当に嬉しかった。期待通りの、いや、期待をはるかに超える素晴らしい演技を見せてくれました。

若き科学者・石村修は、研究に魅せられ、危険も冒して取り組む (C)2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ

そして、修の弟・裕之を演じる三浦春馬くんと、兄弟が思いを寄せる幼馴染の有村架純さん。この2人もそれぞれ「この人しかいない!」と言う思いで出演をお願いしました。 嬉しかったのは、みなさん、非常に難しいテーマだということはわかっていながら、「やります」と即答してくれたこと。

実は、出演交渉をしたときには、この映画が実現するかどうか、まだ目途が立っていなかったんですよ。それでも、この3人が集まってくれたことが、撮影を前進させる大きな原動力になりました。

有村さんは、僕が演出を担当した朝の連続ドラマ『ひよっこ』のときから、演じることに対してあえて何も武器を持たず、体ひとつで思い切りぶつかっていくタイプ。今回の役も「自分が生きたことのない時代なので、とても難しい」と、おっしゃっていたけれど、最終的にカメラが回ると、自分が感じた思いをすべてぶつけるように演じてくれました。