軍人として自らの任務を果たそうとする裕之 (C)2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ

春馬くんにすべてを委ねて

三浦春馬くんともたくさん話し合いました。過酷な戦場を体験した裕之は軍人として死と隣り合わせにいるからこそ、毎日を愛おしく思って生きている。期限付きの命だと自分でわかっているからこそ、笑顔で精一杯生きる。初めて春馬くんと会ったとき、「全力を傾けます」と言ってくれ、この役がなぜ自分なのかということもわかってくれていた。

楽しいシーンはいかに楽しいか、つらいシーンはどれだけ苦しい思いを抱えているかということもお互いに確認し合ったうえで、あとは春馬くんにすべてを委ねることができました。

さまざまな想いを抱え春馬くん演じる裕之が海に入っていくシーンは一発撮り。京丹後の海で、朝、太陽が昇ってくる前のわずか5分程度しかないマジックアワーを狙うと決めていたので、撮り直しが効かない。スタッフも役者さんたちもかなり緊張していましたね。

撮影当日は予想以上に波が高くて、「マジか~?」って感じだったのですが(笑)、柳楽くんと春馬くんの身体能力が素晴らしかった。足元の引き波が強く、体にも波がバンバン当たって来る中で、迫真の演技を見せてくれて。

さまざまな思いに揺れる3人。夜明けの海での一発撮りは波も強く過酷だったが、とても印象的なシーンに (C)2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ

こんな素晴らしい俳優さんやスタッフのみんなと、作品の舞台になった京都の町や海辺で合宿しながら撮影できたのも本当に幸運でしたね。キャストもスタッフも車座で一緒に食事をしながら、明日のシーンに関する真剣な話もしたし、馬鹿話もたくさん。そんなかけがえのない時間が、この作品をいっそう豊かにしてくれたのだと感じています。

幸運と言えば、14年から、故郷の長崎で被爆樹木に新たな命を吹き込む「KUSUNOKIプロジェクト」の活動を続けている福山雅治さんが主題歌を引き受けてくださったのもありがたかった。編集がほぼ上がっていた段階で何度も観ていただき、素敵な曲を提供してくださり、本当に感謝しています。