冷えが消化器を直撃。胃も腸も真っ白に

慢性的な冷えは、消化器を直撃する。「あ、おなかがうずく」とサインがきたらお手洗いに直行したいけれど、そうはいかないのが監視員の仕事。

持ち場を離れるには、まず隣のポジションの担当者に声をかけて、私の担当エリアも監視してもらう必要があるからだ。生理現象だからさすがにイヤな顔はされないが、来場者が多かったり問い合わせを受けたりしてタイミングを逃すと、行きそびれてしまう。

また、静かな展示室で、何でもない時におなかがグルグルと鳴ったり、「授乳室はありますか?」とかれて「はい」と返事をしようと息を吸ったら、大きくゴロンと音を立てたり。休憩室で同僚との会話が途切れた時に、おならのような音が鳴ってしまったこともある。お互い大人だから、誰も面と向かってひやかしたりはしないが、気まずさや恥ずかしさに身が縮む。

そんなことを繰り返しているうち、慢性的な便秘状態になってしまった。健康診断でお腹の膨満感を訴えて腹部のエコーを撮ってもらったところ、「胃にも腸にもガスが溜まっている。真っ白ですよ」と医師に言われたが、特効薬があるわけでもなし、この仕事を続ける限り、不調は改善されないだろう。

美術に思い入れもないから、体のためには転職したほうがいいとわかっている。その半面、実家を出てひとり暮らしを始め、帰宅後も冷房をつけるようにしたら、悩みは多少ましになるのかもしれないと考えることもある。けれども、自立できるだけの給与はもらっていないのだ。

大正生まれの亡き祖母は、ことあるごとに「女じゃけん、辛抱せんといけんのじゃ」と言っていたっけ。まさにその通りだ。一人前の社会人として使ってもらえるところがない私は、我慢を重ねることでしか賃金を得られないのだから。

夏は、子どもたちの休みに合わせて大型の美術展がたて続けに開催される。来場者がどっと増えれば、その分冷房が強めにかかる。覚悟して戦いに臨まなければならない。

 


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