「仕方がない」は魔法の言葉

実は、私が恋愛や結婚、離婚などの相談を受けたとき、この言葉を何度か使っています。なかでも、その言葉がもっとも魔法のように効いたのは、テレビのディレクターから「離婚したいんだけれど妻が応じてくれない。彼女が離婚経験者の山田さんと話がしたいと言っているんだけど、聞いてあげてくれる?」と言われたときのことです。

奥様と何度か電話でお話した後、実際、会って「仕方がない」の言葉を伝えたのです。そのとき彼女は納得のいかないような表情を浮かべていましたが、その後、テレビディレクターから、「山田さんと会ってから、180度、言うことが変わって、前向きに離婚に向けての話し合いに応じてくれることになった。どんなアドバイスをしてくれたの? 本当にありがとう」と感謝されました。

彼女の心のどんな部分に響いたのかはわかりませんが、当時、彼女はディレクターの子どもを妊娠中でした。にもかかわらず離婚を決意。その後、「あなたも子ども受け入れます」と言ってくれた男性と再婚し、幸せに暮らしています。

では私の今はどうなのか…。答えは「幸せ」で間違いありません。「仕方がない」という言葉は、どこか諦めてしまったような響きもありますし、勝ち負けで言ったら、「負け」なのかもしれません。色々な想いを《なかったこと》にすることはできないけれど、ひとまず《完了》させ、次へのステップを踏み出させてくれる魔法の言葉なのだ…と、いまなら思えます。

結婚や離婚だけではなく、人生にはいろんなことが起こります。自分の辞書には存在していなかった「仕方がない」。ときにはそのページを開いてみるのも良さそうです。

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