こうなれば私が先陣を切っていくしかない!
これがマラソンとの出合いです。トラックで悩んだことはあまりなかったけど、以後、マラソンでは悩みまくりました。あんなに何度も挑んだのに、最後まで、マラソンがどういうものなのか、捉えられなかった気がする。
距離が長いから練習をするのも大変だし、やらなければいけない課題は山ほど。タイムと練習内容が結びつかず、自分は体力がないのか、スピードがないのか、やればやるほどわからなくなりました。
こんな形では終われないと練習して挑戦し、それでもまた失敗。負けっぱなしの状態はいやだ、という気持ちだけで、いつの間にかまんまとマラソンの沼にハマってしまったような気がします。
ただ、マラソンにも楽しいことはたくさんありました。特に渋井陽子さんや小崎まり(崎はたつさき)さんはトラックもマラソンも経験している先輩たち。マラソンの経験値を積んで、彼女たちともっと仲良くなりたいと思いました。このへんの感覚は、結局高校時代と全然変わらないですね。
13年の大阪国際女子マラソンで渋井さん、小崎さんの3人で一緒に走ったことがあるんですが、あれは陸上人生で一番楽しいマラソンだったなあ。試合当日も、走る寸前までおしゃべりしていて。
スタートの直前、隣にいた渋井さんが「よーし、痩せてくるぞ」って言ったんです(笑)。最高ですよね。ほぼ並んで走る私たちの間に世界の強豪選手が何人かいて、「これって、軽く世界選手権やん」と、チーム戦のような気持ちになりました。
渋井さんが下がったときは「渋井ちゃんの分までまりちゃんと私で行こう」と思い、次に小崎さんが下がったら、「こうなれば私が先陣を切っていくしかない!」。
2人に背中を押されて、優勝することができました。マラソンは年に何度も走れる競技ではないので、出場レースが重なるチャンスは限られています。だから3人で一緒に走れたのはとても貴重な機会だったし、戦友からもらうパワーはすごいなと思いました。