楽しみをあとに延ばす

わたしが映画を初めて撮ることができたのは47歳のときですが、いまだヒット作を出したことはありません。

もちろんヒット作は出したいと思っていますし、ヒット作が出ればまた次の映画を撮ることができると思うと、先の楽しみが広がります。

映画監督は、年齢を重ねてもできるものなので、楽しみをあとに延ばすことができるのなら延ばせるだけ延ばせばいいと思っています。

この先の人生にまだまだ絶頂期があるのだと思えば、それに向かう楽しみがずっと続いていくわけです。

ただ、楽しみを先にとっておこうと思っても、運命というのは誰にも予想がつかないものですし、年を重ねればどうしてもからだが衰えてくるので、元気なうちに行動に移しておくということもあるかと思います。

たとえば世界旅行に行きたいと思っている場合、一緒に行くパートナーと幸せの思い出が共有できて、その後もお互いに語り草にできるのでしたら、アクティブに動ける早いうちに実現させてもいいのではないでしょうか。

世界旅行がゴールではなく、その思い出をいつまでももち続けられるというのは、これも楽しみがずっと続くということなのですから。

※本稿は、『わたしの100歳地図』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。


わたしの100歳地図』(著:和田秀樹/主婦の友社)

30年以上の長きにわたり、高齢者医療に携わってきた医師でありベストセラー作家でもある和田秀樹が、初めて自身の人生を振り返り、そして、これからの人生を語る和田自身の人生100歳時代の設計図。ひとたび読めば、老後の不安がみるみるうちに消えていき、人生を幸せで豊かにしてくれるゴールデンシニア待望の福音の書である。