鍵付き同居生活
さらに1年後。「結婚まではしないけど、とりあえず家を出て一緒に住む」と親に紹介をした。出逢いから3年半後、由紀さんは34歳になっていた。
「一緒に暮らしてみたい」と、言ってきたのは、彼のほうだった。まだまだ体の関係のほうは進展していなかったが。
「食事のあと、飲みに行くと帰りが遅くなっちゃう。父親は特に心配してないけど、おじいさん、おばあさんが心配するし……と思って紹介したんです。でも祖父母に『一緒に住むんだったら、いずれはちゃんと(結婚)しなきゃダメだよ』と言われて。私は母親の年までというのがあったから、『でも戸籍に傷をつけたくないし』とか、なんか変な言い訳を言っちゃってました」
同居にあたって彼が「2部屋ある部屋を借りたらいいんじゃないか」と提案した。2人であれこれ物件を見に行った結果、きれいな賃貸マンションが見つかったが、由紀さんの部屋と浴室は鍵付きにした。なんという徹底ぶり。やっと同居までこぎつけて、彼に期待をさせておきながら……。
「彼が鍵をつけてくれたんです。彼は鍵のことで怒ったりしませんでした。それどころか、『これくらいキチッとしてるほうが女性としてステキだよ』って言ってくれたんですよ」
由紀さんは、小さく笑った。
「彼は、『一緒に住んでみて、おたがいに生活できるって思えるようになってから結婚を考えたらいいんじゃないかな』って、プレッシャーをかけてきませんでした。同居してはじめてお母さんのことを言いました。彼はびっくりしてましたけど、言っておけば(手を)出してこないかなって安心感のためにも」